郡別岳
〜郡別川林道から増田の沢〜郡別岳南稜尾根ルート〜
Part 3




いよいよ…

南稜岩峰直下にパーティ
自分はまだアイゼン装備はせずに登りだし、「1079mPと南稜岩峰とのコル」を通過する。

南稜岩峰直下では、パーティーが小休止しながら登っている。

ここもなかなかの急登で、コルから岩峰基部まで標高差140mの一直線の直登だ。
右手には…

雪紋の遥か向こうに奥徳富岳(尾白利加山)
岩峰まで登る途中、右手には「奥徳富岳(尾白利加山)」が迫力ある姿で見えている。

そして物凄い風だ。
風と言うより、ブリザートと言ってもいいくらいの突風が吹き荒れている。
風をまともに顔面に吹きかかると呼吸ができないくらいだ。

フードを被り、風をよける。
時折、雪煙が舞う。
先行者のトレース跡も、自分の歩いた後ろのトレース跡も、瞬く間に雪を被って消える。
僅か数秒で足跡が雪に覆われる…まさに自然の驚異だ。

でも、この自然の力でできたシュカブラ(氷紋・雪紋)は、いつ見ても綺麗だ。
やっぱ、いいわコレっ!」ってつい口にしてしまいそうだった。
雪崩斜面?

南稜岩峰東面大急斜面のトラバース
南稜岩峰東面の大斜面に取り付くが、ここが今日のルート一番の難所だ。

先行のパーティーはすでに大斜面を歩き出している。

自分も遅れる事数分、大斜面を巻くようにトラバースを開始。
否が応でも、だんだんと斜度が増してくる。
大急斜面が…
クリックすると「木製の電信柱」が見られます
南稜岩峰東面大急斜面をトラバースするパーティ
先行のパーティーは大斜面の終盤付近まで辿り付いている。

この大斜面、向って右側は標高差500m以上の谷底まで続いている。

岩峰トラバース中間付近は、最大斜度45度以上はあるのではないかと思うほどの斜面だ。

滑落すれば間違いなく大怪我すること間違いない…怪我程度で済めばラッキーだろう。

先行パーティーのトレースを借りながら、とにかく慎重に一歩一歩しっかりと踏みしめながらトラバースする。 
雪庇が…

南稜北側の本峰コルへ向う
先行パーティーはすでに、南稜北側の本峰コルに辿り着いたようだ。

自分も、何とか最大の難所をクリアしてトラバース終盤に差し掛かる。
あ〜ぁ、やっと…

本峰コルから突き上げるように急峻な郡別岳鋭鋒
南稜北側の本峰コルに躍り出る箇所は、やや雪庇になっているが、問題なく通過できる。

やっと本峰コルに躍り出ると眼前に聳え立つ「郡別岳」に圧倒される。

ここで、12本爪アイゼンを履き、およそ標高差120mの急斜面をの直登開始。

先行パーティーは、山頂直下付近まで登り詰めている。

自分も負けじと、ほぼ一直線に黙々と直登していく。
やった〜!山頂狭し…

郡別岳山頂からの眺め
呼吸不全になるくらいの勢いで、登り詰めると念願の郡別岳山頂に着く。

あ〜ぁ!ついにやったぁ〜!」山座同定の眺め、左から浜益岳・雄冬山・暑寒別岳・南暑寒岳・奥徳富岳が大パノラマとなって見えている…感無量、今はそれしか言葉が出てこない。 山頂は意外と狭く、数人が立てればいいところだ。
う〜ん、やっぱ、これしかないっしょ!

さて、これから先はどうしようかと悩む。
奥徳富岳を回って下山?それともそのままを下山?
時計を見ると、11:40を過ぎている。
時間的にギリギリで、間に合わない訳ではないが、ちょっとした油断が危険を招く。
単独行であるが故に、そのリスクは大きいと感じた。
もう少し時間に余裕があればと、感じ得ずには居られなかった。
また何かの機会があれば、挑戦しようと心に決め…そのまま往路を下山する事にした。

先行パーティーはすでに山頂で記念写真を取り終えて、下山を開始している。
山頂は、風が強くて長くは居られないと悟ったのだろう。
そして、先行パーティーは、一気に南稜岩峰東面の大斜面の手前まで下っていった…どうやら昼食するために、風除け場所まで降りたのだ。

自分は、山頂からのパノラマを撮影してから、彼らと同じ考えをしていたが、やっぱり邪魔はしたくない。
山頂に生えるハイマツの陰を風除けにして、2個目のオニギリと甘い羊羹を食べながら、目に映る風景を楽しむ至福のひと時を過ごす。

どうやら先行パーティーは、ランチを終え、下山しだしたようだ。

自分は少し時間をずらしてから、山頂を後に下山開始し始める。
山頂から本峰コルまでは一気に下る…あっという間だ。

 浜益岳から見た郡別岳鋭鋒
左の画像をクリックするとその画像が見られます。
注意!

南稜北側の本峰コルから
南稜北側の本峰コルから見るトラバース手前の極小さな雪庇。

登って来たときと同様、問題なく通過。
気が抜けない…

南稜北側の本峰コルを振り返る
雪庇を通過して、何気なく後ろを振り返る。

いつもの事ながら、登り詰めた山を感慨深くいつまでも眺めている自分が居る…僅か数秒の事なのだが。

う〜ん、やっぱコレだから止められないんだよなぁ〜。
慎重に…

南稜岩峰東面大斜面をトラバース
最大の難所、南稜岩峰東面大斜面のトラバース。
気を抜いてはいけない、左手は斜度45度以上の大斜面だ。
往路と同じように慎重にトラバースしていく。
唯一…

C1079m〜南稜のコルへ下る
南稜岩峰東面大斜面を無事にトラバースするとC1079mと南稜のコルが前方に見えてくる。

あとは、ひたすら下るだけだ。

この先、登り返しは殆ど無いだけに気持ちに余裕が持てる。
樹間越しに…

下山風景
途中、増田の滝を横目に、名残惜しい気持ちを抑えながら、熊の平付近まで一気に下ってきた。

ダケカンバの樹間越し見える風景を目に焼き付けながら、小走りに歩いていく。
意外と…

落差10m弱の登り
熊の平を過ぎ、落差10m弱の登りを終えるとC609m付近だ。

この先は、もう緩斜面の下りが続くだけ…
見納め…!

振り返りざまに見る郡別岳鋭鋒
時折、後ろを振り返ると郡別岳の雄姿が昼時の斜光を燦燦と浴びていた。
いつかまた、登ることができる日が来る事を祈りつつ…

あとはただひたすらに歩き続け、やがて郡別川支流の渡渉地点を過ぎて林道に辿り着く。

ここで先行パーティーに追いつき、簡単に挨拶を交わしてそのまま追い抜いていく。

最後の林道歩きは、辛いものがある。
林道の雪が腐りだし、踏み抜きが多くなってきたため、ワカンを履く。
それでも、ワカンごと踏み抜くほど歩きにくい状態だったが、何とか車デポ地点に15:35に無事到着し、下山完了となる。

総行程約22キロの長い山行だったが、久々に充実した山旅に納得の一日であった。
あとは、車で海岸線をひた走り、車中のステレオから流れる懐かしい荒井由美(現・松任谷)の「中央フリーウェイ」などのアルバムを聞きながら一路、自宅へと帰路に着く。

よぉ〜し、今度は雄冬山でも狙おうか!」……

郡別岳登山からの風景

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